ゲームの話で盛り上がるのも楽しいのですが私たちがやっているのは婚活です。
なので、少しはそれらしいお話もするべきでしょう。
ただ、お見合いなので具体的なお話をするのも少し変な話です。
どちらかというと人柄についてのお話が大事だと考えました。

そんなわけで好きな食べ物や好きな季節について、今の家族の状況なんかを話しています。
ゲームの話で盛り上がった後なので何となく打ち解けて会話を続けることが出来ました。
個人的にはまず仲良しに友達になりたいと思っています。
女性として意識する前にお相手様のことをよく知りたいというのが私の希望です。

――妻は恋人であるとともに、最も近しい友人である。

居なくなった人……ではなくて、私の仲の良い友人が言っていた言葉です。
どこかに行きたい、何かを食べたいと思ったときに一番最初に誘う相手、とのことでした。
これを聞いたときに「なるほどなあ」と腑に落ちたのです。
私には友人がいることはいますが、やはり誘うとなるとエネルギーがいります。

だから一人で出かけることに慣れてしまっていました。
正直言うと、この歳で人間関係を築こうとするのは大変なんです。
純粋に一人でいる方が楽なんですよね。けれど寂しいのも事実。
それを全て結婚相手に埋めてもらおうというのは虫が良い話なのかもしれません。

「なるほど、学生時代はそんな感じだったんですね」
「そうなんですよ~。まさか今の仕事に就くとは思っていませんでした」

「でも良いじゃないですか、今も友人とつながりあるって素敵だと思います」
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいです」

袖浦さんは学生時代の友人とも交流があるそうです。
私にも数人はいますが、今やどうなってしまったのかわからない人の方が多い。
歳をとった後も大人数で集まれるのはうらやましいと思いました。

何となくですが、恋愛よりも友情から発展した関係の方が長続きする気がします。
……まあ、これは人それぞれでしょうね。
妻に対して恋愛感情がないというのは私も寂しいと思いますから。

そんなお話をしている間に終わりの時間が迫ってきました。
ですが聞くべくことと言っておくべきことは話せたと思います。
個人的には今回も手ごたえのあるお見合いでした。

「それではそろそろ時間なので行きましょうか」
「あ、はい! もうこんな時間なんですね」

「あっという間でしたね。とても楽しかったです」
「それはこちらこそですよ」

席を立ったらお会計をしてお店の外に出ます。
空調はしっかり聞いていたので暑さはありません。
お見合いも慣れてきたのか変な汗はかかなくなりました。

「良かったら駅までご一緒しますか?」
「あ、いえ。私はお手洗いによってきますので」

「わかりました。それではここで失礼します」
「はい、今日はありがとうございました」

別れ際もスムーズです。我ながら始めた頃とは大分違ってきたなと思いました。
あまり慣れすぎるのも良くないと考えていましたが今は違います。
やはり何事も経験が大切ですね。ネットで見た小手先の知識はあまり役に立たないと実感しています。
人間と話すというのは簡単なことではないのでしょう。

今回の袖浦さんもとても良い人でした。
でも、その切り口はゲームのお話だった気がします。
人生は一体なにがプラスに働くのか予想が出来ませんね。