霧山さんとの仮交際成立は正直に言って嬉しかったです。
歳下で可愛いというのはポイントが高い。
……こう書くと私も男なのだな、と思ってしまいます。
ただ、それだけで結婚したいとなるわけではありません。

これまで婚活を続けてきたおかげか、難しいと思うことや、自分が相手に求めるものが少しずつ見えてきました。
当初の理想とは少しだけ変わっていると思います。
とはいえ、そもそも選べる立場ではありません。
大切なのは「私を選んでくれる人」ということです。

そんなわけで、霧山さんにはファーストコールのあと、早速LINEを送ってみました。
会話の内容もある程度はテンプレートのようなものが出来上がっています。

「LINEの登録ありがとうございます!
 お店選びの参考に、好きな飲み物とかありますか?
 確か、紅茶を飲んでましたよね」


まずは短めの文章での簡単な質問。
答えを頂いたら少しずつ会話を広げていくのが良いと思います。
なお、霧山さんはお酒を飲めないとプロフィールに書いてありました。
婚活女性はお酒が苦手な方が多いのかもしれません。

LINE送って待つことしばし……。結局、既読すら付きませんでした。
ここでメゲても仕方ありません。
寝てしまったのかもしれないし、スマホを手放したのかもしれない。
この日は結局、そのまま寝てしまうことにしました。

――翌朝、早朝に目覚めてスマホをチェックします。
既読だけが付いていました。
夜遅くに気付いたのかもしれません。
その場合、返事は返ってこないですし、仕方ないでしょう。

私は会社の都合で朝がかなり早いです。
午前6時半に家を出ていますからね。
色々と気を使ってくれたのかもしれません。
こういう生活リズムみたいなものも、婚活においては大事なのかもしれないと思いました。

そして、その日の夜。
やっぱりLINEは返ってきません。
そんなに難しい内容では無かったと思うのですが……。
もしかしたら、小さな事を覚えていたのが逆に気持ち悪かったのかも。

ここで追いLINEは辛いので翌日まで返事を待つことにしました。
友人と夕食に行ってしまったのかもしれないですし、1日ぐらい返事を遅らせることぐらいあるでしょう。
実を言うと、私も返信に対して返事を考えるのが面倒くさい。
もしかしたら、霧山さんも同じ事を考えているのかもしれませんね。

でも、何となく思うことはあります。
やっぱり私は霧山さんに興味を持たれていないのでしょう。
関係を進めたいと思うのなら、面倒でもLINEは返します。
それをしないという事は、そういう事なのでしょう。
翌日、霧山さんから返信がありました。

「私は何でも大丈夫です!
 とろ男さんの好みで選んで下さい」


どうやら、もう一度会ってくれる気はあるようです。
初回デートのお店は出来れば予約しておきたい。
なのでホテルのラウンジを予約した上で返信しました。

「お返事ありがとうございます。
 ならば、お店はこちらで良いですか?」


本来なら3店舗ぐらい候補を上げるところですが、デートは週末です。
都内のお店は簡単には予約出来ません。
3日前には決めておきたいところ。
そんなわけで霧山さんのお返事を待たずに決めました。
もちろん、否定された場合は即座にキャンセルします。

「ありがとうございます。問題ありません」

そのお返事を頂いたのはデートの前日でした。
案の定、私が予約したお店はすでに満席です。
お返事をいただけている以上、不満に思ってはいけないのでしょう。
お店を予約するのも私が勝手にしていること。

……だけど。
なんだか少しだけ虚しい気持ちになりました。